学会名称の意味・経緯

・フラーレン

1985年に発見された新しい炭素同素体の名前。黒鉛と似てsp2炭素の2次元ネットワークが基本構造モチーフであるが、網の構成因子として炭素6角環以外に4,5,7,8角環を含むために、ネットワークが黒鉛のような平面構造をとらず、球、楕円球、チューブ、螺旋など多様な形を示し単層ないし多層状となる。ネットワーク全体が閉じた多面体構造をとることが多い。C60(ニックネーム:バックミンスターフラーレン)のような球形および炭素ナノチューブという一般名で知られるチューブ型が代表的な多面体フラーレンである。これらの場合には立体の面、稜、頂点の数がオイラー公式に従う。


・ナノチューブ

フラーレンの一種であるが、C60と同様に最も生成しやすい。厳密には「炭素ナノチューブ」と呼ぶ。長さは数ミクロンに達することもある。


・研究会発足から今までの経緯

1991年に阿知波洋次、篠原久典が小規模なフラーレンに関する研究会を東京都立大で開催し、これが火種となって1992年に日本化学会の研究会組織にC60研究会という名称で登録され実質的に発足した。同年9月に第一回シンポジウムを東京、豊島区南大塚ホールで開催し、以後研究会とは言いながらシンポジウム開催のみを唯一の活動の場として、国内フラーレン研究者に発表、交流の機会を提供してきた。シンポジウムは年1回半日、30件の発表から始まって、現在は年2回3日間開催、会員数はここ数年実質500名を維持してきた。最近はナノテクノロジーブームに伴って会員数・発表件数ともに増加の傾向にある。会員資格は「フラーレンの科学および研究に関心のある個人又は団体」。

(文:大澤映二)